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言い知れないこと

· 3 min read
Ikuya Yamada
non-stack engineer

語りえぬものを語る、という本の中で好きな一節がある。

野矢茂樹 [著]. 語りえぬものを語る, 講談社, 2020.11, (講談社学術文庫 ; 2637). 978-4-06-521615-6. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I030718449

p386

非概念的な知覚は、そうして概念的な知覚の隙間から溢れ出し、いつか語り出されるかもしれないそのときを待っているのである。

喜びでも悲しみでも、目に見えている景色でも、ふと耳にする音色でも、知覚していることをうまく言い表せないことがある。

新しい表現を学んだり、もしくは新たな表現を編み出すことで、うまく言い表すことができなかった(がたしかにそこにあった感覚・概念)をピタリと言い表すことができたとき、感動を覚える。

新しい言語利用を通じて非概念的な知覚を語り出すことを「知覚」が「待っている」と表現しているのがなんとも素敵だなあと思ったのである。

ところで、得も言われぬ、とか言葉に表せない、という表現を用いるとき、そこで表現したい「知覚」は語り出されるのを待っていなさそうな感じもする。

その場合の用法では、対象の知覚は概念的な知覚の隙間に存在しているというよりは、概念を包むように存在しているような気がする。

うまく言い表せない。