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メタメタに考えるきっかけを得たこと

· 5 min read
Ikuya Yamada
non-stack engineer

社会科学系の文献を読んでいると、時折形而上学が顔を出す。「〜は形而上学な話であって」「形而上学的な議論によると、」といった具合である。

シンプルな漢字の組み合わせ(而は漢文くらいでしか見かけないが、形状としてはシンプルである)である用語だが、それゆえ頭を悩ませることが多かった。シンプルにこの用語の意味がわからないのである。

まずは読み方から確認しておくと、「けいじじょうがく」である。毎度辞書で調べてみても、それが結局具体的に何を指しているのか、身に染みて理解することはできなかった。

柔らかな見た目の漢字の組み合わせに反して、こんな感じの意味だろう、ということも連想されない。

そこで初心者マーク付きの形而上学本を探して読んでみることにした。

スティーヴン・マンフォード [著]ほか. 形而上学, 岩波書店, 2017.12, (哲学がわかる). 978-4-00-061240-1. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I028655858

訳者による後書きに、「形而上学」というワードの由来について説明があり、ひとまずこの文字の組み合わせが示す概念を歴史的な視点から理解する。形而下ではないものが形而上であること、そして翻訳前の英語では metaphysics と言われるが、そもそもなぜメタな物理学なのか、という説明も与えられる。要はアリストテレス全集を並べたときに、物理学の次にくる本がこれだから、ということである。

なお、形而上に対置される形而下の辞書的な意味は次のようになる。

形而下(けいじか)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%BD%A2%E8%80%8C%E4%B8%8B/ 1 形を備えたもの。物質的なもの。 2 哲学で、感性を介した経験によって認識できるもの。時間・空間を基礎的形式とする現象的世界に形をとって存在するもの。⇔形而上。

文字を打ち込むために触れているキーボード、机の上にあるスマートフォンやボールペンは、形而下の存在と言えそうである。昨日食べた朝食もおそらく形而下であるが、昨日食べた朝食を思い出せないこと、はどうだろう。

本書では時間の問題や存在の問題などの形而上学の基本的な問いについて問われている対象や問い方を優しく教えてくれる。形而上学とは〜という学問である、というよりは、〜とは何か?と問うことが形而上学である、といった風の整理がなされる。

椅子とはなにか?から始まって、ドラマやスポーツの例も交えて、問いを立てること、そしてその問いについて考える方法を提示しており、ふんふんと終わりまで読むことができた。多少は入門できた気がするような、まだ何もわからないような、ともかく最後まで読むことができたのでポジティブな印象が残る一冊である。